第21回 治療院の接待交際費
飲食代
治療院を経営する山田さんは仲良くなった患者さんから一緒に飲みに行こうと誘われました。待ち合わせして入ったのは安い居酒屋。ひょっとして高級クラブかもと期待していた山田さんはガックリ。気を取り直して飲んでいるうちにアルコールがまわり楽しくなってきました。帰りに「お勘定」と患者さんが言ったので、おごってもらえると思っていたら「割り勘にしましょう」と言われて、酔いが醒めてしまいました。とりあえず居酒屋の領収書はもらったのですが、これは治療院の事業に係る必要経費になるのでしょうか?税務上は「専ら事業の遂行上必要と認められる場合に限り」必要経費として認められます。
このケースは山田さん一人の飲食代で、接待していないので必要経費とするのは無理です。では、このケースで、山田さんが飲食代を全額負担し患者さんを接待した場合はどうなるのでしょうか?この場合は、得意先の接待になるので必要経費として認められるでしょう。しかし、治療院側が患者を接待するのは常識的にはちょっと変ですね。患者の悪いところを治すので、治った患者から接待されるのが普通と思われます。接待する客観的な理由が必要でしょう。では、従業員を慰安のために居酒屋に連れて行ってその費用を山田さんが負担した場合はどうでしょうか?その負担額が常識的な額であれば必要経費になります。
ゴルフの会員権代、年会費、プレー代
山田さんは最近ゴルフにハマっています。月に一度ぐらい同業者の友達といっしょにプレーしていますが、このプレー代は必要経費になるのでしょうか?また、ゴルフの会員権も安くなってきたので購入も考えています。会員権の代金や、年間の会費は必要経費になるのでしょうか?山田さん一人分のプレー代は、接待のための支出ではないので必要経費にはなりません。では全額山田さんが負担した場合はどうでしょうか?相手が同業者の友人の場合、その接待した目的が事業に関連するものかどうかがポイントになります。単に遊びが目的であれば当然必要経費にはできません。その友人が分院を持っており、分院経営のノウハウを教えてもらったお礼だったらどうでしょうか?これは必要経費として認められると思います。しかし、税務調査で領収書しか残っていない場合は、口頭で説明しても本当かどうか調査官から信じてもらえないかもしれません。接待した相手の会社名、氏名、接待の目的を領収書のウラにその都度記入しておく習慣をつけておきましょう。
かつて税務調査で過去5年分の交際費について、接待した相手の会社名、氏名、接待の目的を書面で明らかにするようにと言われたことがあります。その治療院は交際費が業界平均よりかなり多かったので税務署から目をつけられたようです。過去5年と言われても事業主は憶えていません。こんな思いをしたくなかったら、あやしい支出を経費に入れるのはやめましょう。
次にゴルフの会員権の購入代は費用にはなりません。法人で購入する場合は、その名義を法人にすれば、法人の資産になります。年会費は会員権を法人で資産計上している場合は、法人の交際費になります。ただ法人で購入しても、これを役員が個人的な利用しかしない場合は、交際費ではなくて役員賞与になってしまいます。
以下省略