上田会計週報『権限委譲の効果』2014.07.07
目標管理制度の運用では、しばしば“権限委譲(エンパワーメント)”が行なわれますが、その意味を認識して活用すると、より大きな効果が得られます。
“権限委譲”とは
“権限委譲(エンパワーメント)”とは、業務目標を達成するために、組織の構成員に自律的に行動する力を与えること、言い変えれば、「管理者と部下の間で、目標・方針の大綱を合意、決定したら、その方法や実施の権限を部下に委譲すること」を指し、管理者がリーダーシップを発揮するために必要な技術とされています。
“権限委譲”の効果
“権限委譲”で次の効果が得られます。
① 業務目標達成プロセスでの方法の選択、実施について、部下がいちいち管理者の許可を得ることなく、自らの権限で実施でき、臨機応変の処置がとれるので、達成スピードが速くなる。
② 管理者は部下の自主性を尊重し、必要な場合にのみ支援することになるので、目標達成プロセスで、問題が生じた場合、上司が具体的な解決策や指示を与えることなく、部下自らが、問題を発見し、解決策を考え、実施する主体者になる。したがって、部下の不足している能力の開発が進み、人材育成効果が生まれる。
管理者の留意点
“権限委譲”によって、予期した人材育成効果を上げるためには、委譲する管理者の立場で次の点に留意すべきです。
① 部下の現状の能力から見て、かなりの努力が必要な権限委譲とそれに伴う責任の付与を行なう。
② 部下が、失敗を恐れず、委譲された権限をフルに行使するように求める。(一方で、部下の失敗の最終責任は管理者が負う覚悟を持つ。)
③ 委譲した以上は、問題が生じた場合、じれったく感じても部下自身が解決方法を決断するまで辛抱強く待つ。
④ 部下が自ら決めたことは、“石にかじりついても完遂すること”を求め、それが“権限を委譲された者が責任を果たす厳しい行為であること”を理解してもらう。