経営者としての心構え
経営理念、経営方針、信条
たとえ一人で治療院を営んでいても事業主は経営者です。今回は経営者としての基本的な心構えの話をしましょう。先ず、治療院にも経営理念、経営方針、信条というものが必要です。これは私の事務所の顧問先治療院の信条です。『自己を含め、関わる全ての人の「心身の健康」を助け、「こころ」も「からだ」も健康的に両立した元気あふれる生活を治療を通して提供、提案する事』この文言が額縁付きで待合室に掛けてあります。こういった文言は、自分は何のために開業したのか、何のために今の仕事をしているのかをもう一度よく考えてみることで生まれてきます。これは自分自身そして従業員、患者に対してのメッセージです。本音は金持ちになって外車を乗り回したい、六本木のキャバクラで豪遊したい(笑)と思って開業したとしても、それは対外的なメッセージにはなりません。治療家としての専門的な知識、経験をもとに患者を治療し社会に貢献したいという強い思いを昇華させたメッセージです。先ほどの顧問先は、「信条」の額縁の隣に、このような患者はうちではみませんというメッセージを額縁付きで掛けています。『不活の者 六条件 一、驕りたかぶり、気ままに振舞い、道徳を無視する者 二、身を軽んじ財を重んじる者 三、衣料や飲食が妥当でない者 四、陰と陽の気が定まらぬ者 五、活す気がない者 六、医術を信じぬ者』
ちなみに私の事務所の経営理念は『Your smile is our happiness お客様の発展・繁栄に貢献します』行動指針は、『一、お客様から「ありがとう」といわれる職員になる 二、お客様の経営・経理・資金繰り・税務の良きアドバイザーになる 三、お客様の財産を増やし、守っていく 四、お客様に対しできうる限りの節税アドバイスをする 五、お客様に対し常に笑顔で気持のよい対応を心掛ける 六、お客様に対し最新の情報を提供する 七、お客様に対し素早い対応と正確な業務を心掛ける 八、お客様に対し法令順守及び毅然たる気持ちを忘れないようにする 九、お客様のために常に勉学に励み専門性の高い知識を身に付ける 十、お客様と共に成長する』
素直な心
経験を積むほど、新しいことに否定的、保守的になっていく自分がいます。事実をありのままにみないで自らのフィルターを通して主観的に判断してしまいます。これに対して松下電器(現パナソニック)創業者松下幸之助は、経営者に必要なのは「素直な心」だといっておられます。「素直とは、自然の理法、すなわち本来の正しさに従うことである。正しいこと、真実なるものに忠実であり、従順な心である。正しい答えはすでに、天地自然の理の中に存在している」たまたま治療院の経営がうまくいったからといって現場を従業員に任せて遊び始め、気がついたら患者が離れていったというケースは多々あります。治療院経営は今のままでいいのか、常に考え、客観的に自分の事業をみることができるようになりましょう。
自己責任
人間だれでもうまくいかなかったときは、それを他人のせいにしたがります。これを責任転嫁といいます。特にサラリーマンは、自らの権限・職務範囲が限定されているため、思うように仕事が進まないときは、それを会社のせいにしがちです。しかし経営者の場合は、事業全ては自分の責任になります。事業がうまくいくのもいかないのも経営者の責任です。言い訳はできません。患者が悪い、従業員が悪い、業者が悪い、社会が悪いといった他人のせいにしてしまうとなにも改善されません。例えば、業者からいい物件があるから出店しないかと誘われて出店したが、患者が思ったほど来なかった。これは業者が悪い。自分は悪くないと考えてもなにも改善しません。十分な事前調査をしなかった自分が悪いと考えることで同じ過ちは繰り返さないようになります。
日に新た
経営環境は日々変わっていきます。経営者はこれに対応していかなければなりません。今うまくいっているからといって、それが未来永劫続くことはありません。治療院の経営者は一日中治療院のなかにいます。そして専門職です。どうしてもは視野が狭くなりがちです。意識して広くする努力が必要です。成功した事業家の本を読んだり、外部の経営の勉強会にでたり、異業種交流会にでて異業種の経営者と話しをすると、新たな気づきや学ぶべきことが多々あります。また絶えず自己革新を行っていくことです。人は自己概念を上質なものに変えることで変われます。経営者は日々意思決定を行っていますが。この意思決定のベースとなるのは、経営者の頭のなかの判断基準です。この質をよりレベルの高いものに変えていくことで、事業も発展していくことができます。一人で事業を始めたときは、「一年後には受付と助手を入れよう」という目標を持つと、自ずと一日当たりの売上目標も高くなり日々の行動も変わっていきます。「三年後には分院を持とう」という目標を持つと、スタッフのなかからそれまでに分院長ができる人を育てようという気になります。
現状分析、経営戦略、経営計画
では、「日に新た」な事業経営は具体的にどのように進めていけばいいのでしょうか。先ず、自らの戦いの土俵を知ることです。これを現状分析とよびます。今、治療院をとりまく外部環境は同業者の増加、隣接業界による客の取り合い(高齢者歩けなくなると介護業者にとられてしまう)、保険請求の厳格化など厳しいものがあり、これらは今後さらに厳しさを増していくものと考えられています。また患者側の意識の変化があります。若い患者はインターネットから治療院を探します。それもPCサイトより携帯サイトの方がアクセス件数が多くなってきました。また患者の個人的欲求がより強くなってきました。もっと自分のためになにかしてほしい。痛みを治すだけではなくプラスここちよさがほしい等々。一方治療院の内部環境はどうでしょうか。自院の強みは何なのか、弱みは何なのか。サービスメニューに保険外のものはなにがあるか。スタッフのレベルは、どの程度なのか。
現状分析が終わったら、これをもとに経営戦略を考えます。同業者の増加に対しては、差別化により患者から選ばれる治療院になることで生き残りを計ります。あの院に行けば腰痛が必ず治るとか、ひざ痛が必ず治るとかいった専門特化型や、受付や先生の応対がとても感じがいいといったサービス向上型等々。隣接業界による客の取り合いに対しては、逆にこちらから隣接業界に参入していきます。奥様がケアマネージャーの資格をとって介護でも報酬をとられている顧問先があります。保険請求の厳格化に対しては、保険外施術を増やしていくことで生き残りを計ります。インターネットへの対応としては、ホームページを店舗紹介型から問題解決型に変える。例えば、肩こりの治療を全面にだします。このように症状を掲載した方が検索でひっかかりやすくなります。また携帯サイトからも検索できるようにしましょう。患者の個人的欲求がより強くなってきたことに対しては、患者とのコミュニケーションの充実を図ります。患者の話をよく聞くことで患者がなにを望んでいるのかがわかります。またクレームの減少にもつながります。
治療院が売上を増加させるには、患者数を増やすか客単価を上げるしかありません。患者数を増やすには、本院をより駅前の人通りの多いところに引っ越したり、分院を展開する方法があります。また、訪問マッサージや介護などの隣接業界への参入、施術メニューの追加によって患者数を増やす方法もあります。客単価を上げるには、腰痛、肩こり、ひざ痛、O脚・骨盤矯正など客単価の高い保険外施術メニューを用意します。私の顧問先には、柔道整復師でありながら、全て保険外施術のみで一回の施術代一万八千円取っている治療院があります。
経営戦略を考えたら、次に経営計画を立てます。対象期間により向こう1年間の単年度経営計画、向こう3年から5年間の中期経営計画などがあります。また経営者がすべて考えて作成するトップダウン型とスタッフも参加させて一緒に作成するボトムアップ型があります。大事なことは、経営目標を設定しそれをいつまでにだれが達成するかを明文化することです。できるだけ実際に実行する人に自らの経営目標を設定してもらいます。そして一日あたりの来患数や平均客単価、売上高や経費など数値化した目標も併せて設定します。経営計画を立てたら、これを実行します。そして定期的にチェック・検証します。
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