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寄附金

治療院を営んでいる山田さんは、東日本大震災の被災者の方に寄附をしたいと思っています。この寄附金は事業の必要経費になるのでしょうか。あるいは所得税等への優遇措置はあるのでしょうか。

寄附金とは、一般的に国や地方公共団体、公益目的の会社や団体、認定NPO法人、その他一般などへ寄附をする、反対給付を伴わない任意的な支出のことをいいます。個人事業主の山田さんがこのような寄附をした場合、この寄附金は事業の必要経費にはなりません。これは、事業との関連性がない支出のためです。その代り、税務上認められた特定の寄附金は、寄附金控除の適用が受けられます。国や地方公共団体、公益法人等への寄附金がこれにあたります。金銭以外の物による寄附も寄附金控除の対象になります。この場合は寄附をした時点での時価で寄附したことになります。

 

今回の東日本大震災向けの寄附の仕方としては、①被災者に直接お金を渡すもの。②被災した自治体に渡すもの。③被災者支援団体に渡すものなどがあります。被災者に直接お金を渡すものとしては、日本赤十字社や中央共同募金会などがあります。被災した自治体に渡すものは、従前からある「ふるさと納税」の制度を利用し、寄附者にも住民税額控除の恩典を与えるものです。被災者支援団体に渡すものは、「指定寄附金」(財務省が指定したNPO法人などへの寄附金)といわれ、寄附者に所得税額控除の恩典を与えるものです。

国税庁は今回の「震災関連寄附金」について具体的に次の9つをあげています。

①平成23年3月11日から平成25年12月31日までの期間内に国に対して直接寄附した義援金等

②指定期間内に「著しい被害が発生した地方公共団体」(※)に対して直接寄附した義援金等

③日本赤十字社の「東日本大震災義援金」口座へ直接寄附した義援金、新聞・放送等の報道機関に対して直接寄附した義援金等で最終的に国又は「著しい被害が発生した地方公共団体」(※)に拠出されるもの

④中央共同募金会の「東日本大震災義援金」として直接寄附した義援金等

⑤中央共同募金会の「災害ボランティア・NPO活動サポート募金」として直接寄附した義援金等

⑥認定NPO法人に対し、東日本大震災の被災者支援活動に特に必要な費用に充てるために行った寄附金(その募集に際し、国税局長の確認を受けたものに限ります。)

⑦公益社団法人又は公益財団法人に対し、東日本大震災の被災者支援活動に特に必要な費用に充てるために行った寄附金(その募集に際し、当該公益社団法人又は公益財団法人に係る行政庁(内閣総理大臣又は都道府県知事)の確認を受けたものに限ります。)

⑧公共法人・公益法人等・特例民法法人・認定NPO法人(以下「公共・公益法人等」といいます。)に対し、東日本大震災により滅失又は損壊をした建物等(収益事業以外の事業の用に専ら供されていたものに限ります。)の原状回復に要する費用に充てるために行った寄附金(その募集に際し、当該公共・公益法人等に係る主務官庁の確認を受けたものに限ります。)

⑨ ①から⑧以外の義援金等のうち、寄附した義援金等が、募金団体を通じて、最終的に国又は「著しい被害が発生した地方公共団体」(※)に指定期間内に拠出されることが明らかであるもの。
※「著しい被害が発生した地方公共団体」とは、被災者生活再建支援法の適用団体とされており、具体的には、青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、千葉県の各県(県内の市町村も含みます。)、長野県栄村、新潟県十日町市、新潟県津南町をいいます。また、上記⑤及び⑥の義援金等が、「指定寄附金」になります。

 

次に寄附金の税務上の取り扱いについて説明します。個人が税務上認められた特定の寄附金を支出した場合、所得税では寄附金控除が適用されます。ただし今回の震災対応で「指定寄附金」になる場合は寄附金控除と税額控除の選択適用ができます。

具体例で見て行きましょう。個人事業主である山田さんが、収入から必要経費、所得控除を差し引いた課税所得が400万円で10万円の寄附をした場合、寄附金から2千円を控除した98,000円が寄附金控除として所得から差し引けます。このケースでは所得税率が20%なので、所得税額は19,600円減額されます。この寄附金控除は通常は所得金額の40%が上限になりますが、今回の震災関連の場合は80%まで控除できます。税額控除額は、寄附金から2千円を控除した98,000円の40%である39,200円になります。指定寄附金の場合、寄附金控除による所得減税額19,600円と税額控除額39,200円の有利な方を選択できますので、この場合は税額控除を選択します。この税額控除は所得税額の25%が上限になります。またこの指定寄附金は所得金額の80%が上限になります。所得税の税率は40%が上限なので、寄附した個人の所得税率が40%より低い場合は、税額控除の方が寄附金控除より有利になります。所得税率が40%の場合は、税額控除額も寄附金控除による減税額も同額になります。

 

住民税では、所得税で寄附金控除が適用されるものについて基本分の税額控除が適用されます。課税所得400万円、寄附金10万円の場合、5千円を控除した95,000円の10%である9,500円の税額控除が受けられます。この基本分の税額控除は総所得金額の30%が上限になります。「ふるさと納税」の場合はさらに特例分の税額控除が受けられます。寄附金10万円から5千円を控除した95,000円に、90%から所得税の限界税率20%(課税所得400万円の時の所得税率)を差し引いた70%を掛けた66,500円になります。特例分の税額控除は住民税所得割額の1割40,200円が上限になります。結果として、基本分9,500円と特例分40,200円の合計49,700円の税額控除が受けられることになります。(住民税は自治体により税額が異なることがあります)このケースで寄附金の支払先が日本赤十字社や被災した自治体の場合、所得税19,600円、住民税49,700円、合計69,300円が減税されます。寄附金10万円の支払いに対して減税額が69,300円。これがわかっていればもっと積極的に寄附が出来ますね。支援NPO団体の場合、所得税39,200円、住民税9,500円、合計48,700円が減税されます。

個人が寄附金控除を受けるためには、寄附を行った年度の確定申告書または住民税申告書に寄附金控除に関する事項を記載するとともに、振込をした際の振込金受取書、振込票等を添付するか、提出の際提示してください。平成23年に寄附を行なった場合、平成23年度の確定申告書(平成24年3月提出)でこれを行ってください。個人住民税の寄附金控除は寄附した年の翌年度の住民税からとなります。

 

法人が今回の震災に対して行った義援金等は、その義援金等が「国や地方公共団体に対する寄附金」、「指定寄附金」に該当するものであれば、支出の全額が損金の額に算入されます。個人のような税額控除の特例はありません。法人の経営者の方は、個人と法人とどちらでも寄附ができますが、税制上は個人の方が優遇されています。損金算入の適用を受けるための手続きは、法人税の確定申告書の別表「寄附金の損金算入に関する明細書」の「指定寄附金等に関する明細」に寄附した義援金等に関する事項を記載し、義援金等を支出したことが確認できる書類を保存する必要があります。

 

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