「早期経営改善計画」の活用
国はリーマンショック後、中小企業の金融支援のため外部専門家(弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士等の認定支援機関)の協力を得て、「経営改善計画」の策定を支援する制度を設けました(平成25年3月、補助率:2/3 補助上限額:200万円)。しかしその後、中小企業・小規模事業者の経営改善を進めていくには、金融支援を必要とする前の早期の段階から経営者が経営改善の重要性を認識し、資金繰り管理や採算管理等について自発的に取組み、金融機関との間に適切な情報開示を行っていくように促していくことが重要とし、平成29年5月より、認定支援機関の支援を受け、資金繰り実績・計画表や損益計画など基本的な内容の「早期経営改善計画」を策定する費用やモニタリング費用を支援する制度を設けました。(補助率:2/3 補助上限額:20万円 うちモニタリング費用5万円まで)
特徴とメリット
この事業の特徴は、「経営改善計画」が金融機関から返済条件の緩和等の金融支援を受けることを目的として本格的な経営改善計画を作成する必要があったのに対して、金融支援を目的とはせず、早期から自己の経営を見直すための資金実績・計画表やビジネスモデル俯瞰図などの基本的な計画を作成し、メイン又は準メイン金融機関1行に提出します。そして1年後の決算時に認定支援機関がモニタリングを実施します。早期経営改善計画を作成するメリットは、①外部専門家の力を借りて客観的に自社の経営課題の発見や分析ができる。②資金繰り実績・計画表を作成することで資金繰りの把握が容易になる。③事業の将来像について金融機関に知ってもらうことにより今後の融資を前向きに進めてもらえる。
こんな方にお勧め
今のところ返済条件等の見直しは必要ないが、ここのところ資金繰りが不安定。売上が減少している。自社の状況を客観的に把握したい。専門家等から経営に関するアドバイスが欲しい。経営改善の進捗についてフォローアップをお願いしたいといった経営者にお勧めです。
治療院の場合、複数の分院展開により金融機関からの借入金も多額にあり、このところの保険施術収入の減少により金融機関への毎月の返済が苦しくなってきたようなケースは、金融機関との交渉のため「経営改善計画」を作成することをお勧めします。一方、本院のみで営業されており、保険施術収入の減少により将来的には保険外の施術収入を増やしていきたい。そのためには保険外の施術技術を習得するための費用や治療機器購入代等がかかるが、これを金融機関からの融資で調達したいとお考えの方には、この「早期経営改善計画」の作成をお勧めします。
手続きの流れ
1.「早期経営改善計画」の作成をする必要があるかどうかの検討を行う。取引先の金融機関、知り合いの税理士等の認定支援機関、最寄りの経営改善支援センターに相談してください。作成する場合は金融機関への事前相談は必須です。金融機関から事前相談書を入手し経営改善支援センターに提出する必要があるためです。
2.利用申請 申請者は、金融機関から入手した事前相談書を添付して認定支援機関と連名で「経営改善支援センター事業利用申請書(早期経営改善計画)」を、経営改善支援センターに提出します。経営改善支援センターでは申請書の内容について検討し、費用負担することが適切と判断した場合は、その旨を認定支援機関に通知します。
3.「早期経営改善計画」の作成をします。金融機関、認定支援機関と相談しながら作成してください。中小企業庁が“SAMPLE”として開示しているものはA4サイズ4枚。①「ビジネスモデル俯瞰図」は会社の事業内容、業歴、資本金、従業員数、自社と顧客、仕入れ先との関係をチャート化。②「資金実績・計画表」は、前々年度実績、前年度実績、当年度は実績と今後6ヵ月程度の見通しを記載する。記載項目は月別売上高、借入額、返済額、借入金残高、現預金残高。③「損益計画」は、直近期実績、計画0年目、計画1年目、計画2年目の売上高、売上原価、売上総利益、販売費・一般管理費(人件費、減価償却費、その他経費)、営業利益等。④「アクションプラン」は、主な経営課題3つ。この3つの主要課題に対するアクションプランの具体的な内容、その実施時期、主担当者等。見た感じシンプルでそんなに時間をかけなくても作成できると思います。申請者は作成した計画書を金融機関に提出します。
4.支払申請及び支払決定。事業者は、金融機関に計画書を提出したことを確認できる書面を添付して、認定支援機関と連名で費用支払申請書を経営改善支援センターに提出します。経営改善支援センターは提出書類を検討し、支払決定額を認定支援機関に通知します。
5.モニタリング。認定支援機関は1年後の決算時に事業者の経営改善計画のモニタリングを実施し、モニタリング費用支払申請書、モニタリング報告書を経営改善支援センターに提出します。
ローカルベンチマークの活用
国は金融機関等による中小企業に対する経営支援の参考になる評価指標・評価手法(ローカルベンチマークと呼ぶ)を作成し、金融機関等に対してこの手法を積極的に活用するように促しています。具体的には、第一段階として、地域の産業構造や取引の流れ、雇用状況などを分析して、個別の産業が地域経済に与える影響や重点的に取り組むべき課題を明らかにします。第二段階として、対象企業の財務情報、非財務情報の分析を行います。これらをもとに、経営者、金融機関・支援機関が対話を重ね、経営課題を整理。生産性向上に努める企業に対し、成長資金を供給していくことが期待されています。医療・介護・福祉分野は今後さらに伸びていくことが予想されます。治療院の経営者の皆様もこの分野の成長の流れに乗れるような事業展開を、ローカルベンチマークを活用して考えていきましょう。
第二段階として、対象企業の財務情報、非財務情報の分析を行います。の説明
財務情報としては、①売上高増加率(売上持続性)②営業利益率(収益性)③労働生産性(生産性)④有利子負債倍率(健全性)⑤営業運転資本回転期間(効率性)⑥自己資本比率(安全性)の6指標。非財務情報としては、商材の特徴、顧客、仕入先、人材、後継者の有無等。
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