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第16回 従業員の雇用保険、社会保険と給与計算

今回は従業員の雇用保険、社会保険と給与計算について話をします。よく事業主の方から質問があるのは、従業員を初めて雇用するが雇用保険や社会保険に加入しなければならないのか、給与計算はどのようにやればよいのかといったものです。

労働保険(労災保険と雇用保険)

これから労働保険について事業主として最低限知っていなければならないことをお話します。労働保険は常用、パートにかかわらず、賃金を支払う事業所は原則加入になります。労働保険は労災保険と雇用保険に分かれます。労災保険は、個々の労働者が加入するのではなく事業所で加入します。労災保険に事業所が加入していれば、労働災害があった場合、常用、パートの別なく労働者は保険の適用対象になります。雇用保険は個々の労働者について加入・離職の手続きを事業所が行います。雇用保険に加入している労働者は、加入期間が以前は通算半年以上、現在は1年以上になると失業保険の受給資格を得ます。労働保険の加入手続きは最寄りのハローワークで行います。

気になる保険料ですが、現在労災保険料は全額事業主負担で、支払賃金の1000分の5になります。支払賃金には労働の対価として支払ったものはすべて含まれます。通勤手当も含まれます。雇用保険料は、支払賃金の1000分の9が事業主負担、1000分の6が労働者負担になります。保険料の納付は、4月から翌年3月までの支払賃金をもとに計算し申告書を5月に提出し、納税します。

ここからは実際のところの話ですが、治療院でもパートやアルバイトだけ使用しているところや、少人数のところは労働保険に加入しているところは少ないようです。しかし、ハローワークで求人するには、労働保険への加入をしていないと原則求人ができません。また、雇用助成金をもらうにも加入が条件になります。雇用保険の加入、離職手続きをするためには、労働者名簿、雇入通知書、出勤時間の記録(タイムカード等)が必要です。

労働者名簿、雇入通知書についてはハローワークでひな形もらえます。雇入通知書には、雇用期間、始業・終業時刻、休憩時間、休日又は勤務日、所定外労働の有無、休暇、基本賃金、諸手当、所定外労働の割増率、昇給の時期、賞与の有無、退職金の有無などが記載されており、労働保険への加入の有無にかかわらず、雇用時に労働者に渡して説明することで、入社後のトラブルを防ぐことができます。よくあるトラブルは、口頭で労働者に賃金の説明をしたが、給与支払時に支払額が話と違って少ないといってトラブルになったり、終業時刻が話と違って遅く残業代も支払われないといったようなことです。

社会保険(健康保険と厚生年金)

治療院を営んでいる事業主はほとんど、健康保険は国民健康保険、公的年金は国民年金です。国民健康保険は、前年の住民税によって保険料が決まってきます。保険料の支払額は市区町村によって異なります。財政の厳しい市区町村ですと、保険料も高くなっていることがあります。国民年金は全国一律で支払額が決まっています。最近開業された若い先生のなかには国民年金に加入されていない方も増えています。では従業員を雇用した場合、従業員の社会保険はどうすればよいのでしょうか。

個人事業の場合は、従業員5名未満ですと社会保険に加入する義務はありません。各従業員が、国民健康保険、国民年金に加入して保険料も自分で払います。他方、個人事業で従業員が5名以上の場合は原則社会保険に加入しなければなりません。このケースでおもしろいのは、対象はあくまで従業員で、事業主は対象から外れ国民健康保険と国民年金のままです。法人は1名以上から原則加入で、この1名には役員も入ります。従って、事業主が一人会社を設立した場合は、事業主は社会保険に原則として加入しなければなりません。パートの場合は、週の労働時間が正社員の4分の3以上になると加入の対象になります。気になる保険料ですが、政府管掌健康保険料は介護保険なしの場合賃金の8.2%、ありの場合9.43%。これを労使で折半します。厚生年金保険料は賃金の14.996%。これを労使で折半します。賃金には通勤手当も含まれます。料率は定期的に見直しがあり、少子高齢化に伴い今後上昇していくものと思われます。

ここからは実際の話ですが、治療院で社会保険に加入しているところは極めてまれです。これは大部分が従業員5名未満の個人事業だからです。法人として事業を営んでいる治療院も、社会保険に加入しているところは少ないようです。法人では、原則加入ですが、保険料の経営側の負担が大きいためのようです。しかし、優秀な従業員を確保するために積極的に加入することも検討するべきでしょう。

 

(全文2000文から、冒頭のみ抜粋表示)

冒頭以降の主な内容

源泉所得税と源泉住民税

給与計算と支払
 

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