第28回 治療院の売上・経費データ
治療院を営んでいる山田さんは、自院の売上や経費そして利益が他院に比べてどうなのか、また人件費や家賃は売上に対してどれくらいが理想なのか前から知りたいと思っていました。
上田会計では、個人事業、法人も含めて200件以上の治療院をみております。
そこで今回、本邦初となる治療院の売上・経費の統計データを公表させていただくことといたしました。
今回の対象は、顧問先の個人事業(法人は除く)で、平成21年、平成22年の2年間の売上・経費データ。
件数は約150。顧問先の地域は関東圏がほとんどです。
年の途中で開業された場合は、開業月からの月割で平均月額を計算しました。
ただし年の後半に開業され赤字決算となったものは除外しました。
集計の最小単位は個人事業主で、この中には分院をお持ちの方5%も含まれています。
先ず、全件平均値から見ていきましょう。
月売上は平成21年1,342千円から平成22年1,341千円とほとんど横ばいです。
内訳を見ると保険売上と自賠責収入が平成21年に比べて若干下がった分を自費収入のアップでカバーしたことがわかります。
この間、療養費算定基準の見直しが平成22年6月にありました。
具体的には、4部位目の給付率が33%から0%に、3部位目の給付率が80%から70%に、後診療(打撲・捻挫)の技術料が470円から500円に改定。
データで見る限り、この改定の影響はほとんどなかったようです。
また、平成20年9月のリーマンショックの後、平成21年、22年と日本経済は不況の波のなかで揉まれ、民間企業の倒産やリストラ、派遣切り等がありましたが、この影響もほとんどなかったようです。
これは保険売上をメインとしたビジネスが景気の影響をあまり受けない安定的なビジネスであることを示しています。
経費については、平成21年に比べて経費合計が914千円から899千円と、月15千円減少。
対売上比も68.1%から67.0%にダウン。
内訳で見ると、従業員給与が月15千円アップ。
アップ率6.4%。売上比は17.4%から18.5%にアップ。
売上が増え、従業員が増えるほどこの比率はアップしていきます。
現場では相変わらず求人をしても人が来ないという声が多くあり、売上は横ばいですが、給与を上げて従業員を確保している様子がうかがえます。
家賃は前年比2.1%ダウン。
家賃相場が下がっていることがわかります。
対売上比は12.6%から12.3%にダウン。理想は10%を切ることです。
これは売上上位20%、営業利益上位20%の平均値では10%を切っていることからも明らかです。
減価償却費は月14千円減少。
これは、減価償却方法に定額法と定率法があり、上田会計では定率法を採用している顧問先が多いことが一因と思われます。
定率法は定額法に比べ早期に費用化します。
リース料は前年比月5千円減少。これはリース物件の値下げ、リースアップによるものと思われます。
その他の経費は前年比月7千円弱減少。
結果として営業利益は、前年比428千円から442千円に月14千円増加しました。
売上が横ばい、経費が減った分利益が増えました。
(以下省略)