最新統計で見る接骨院・治療院業界の現状と今後

これからの時代、淘汰されない整骨院・接骨院にしていくためには、
現在の業界の動向について深く知り、戦略を立てることが何よりも重要になります。
この記事では、厚労省「令和6年衛生行政報告例 隔年報」から読み取ることのできる治療院の現状と未来について、手技療法家向け雑誌「ひーりんぐマガジン」の元編集長であり、治療院の経営経験がある佐藤吉隆氏にお話しを伺いました。
「衛生行政報告例 隔年報」とは
保健師、看護師、歯科衛生士、「あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師(あはき師)」「柔道整復師(柔整師)」などの国家資格者の就業数や施術所の数等が集計された衛生行政運営の基礎資料を得ることを目的とした統計です。
あはき師(あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師)と柔道整復師の資格合格者数の変化
あん摩マッサージ指圧師は前回の2022年公表時と比べて、790人増加していますが、
直近10年で見ると、就業者数は頭打ち状態になっています。
はり師・きゅう師は毎回の調査で5,000人ほど増加しており、増加傾向にあることが分かります。
柔道整復師は、2024年の調査では7万8,666人で、2018年から8年間で約15,000人増加しています。2012年までは2年間ごとに約8,000人近く増加していたものの、2020年以降の増加は千人台にとどまり、増加率は低くなっています。
| 2014年 | 2016年 | 2018年 | 2020年 | 2022年 | 2024年 | |
| あん摩マッサージ指圧師 | 113,215 | 116,280 | 118,916 | 118,103 | 118,913 | 119,703 |
| はり師 | 108,537 | 116,007 | 121,757 | 126,798 | 131,486 | 136,736 |
| きゅう師 | 106,642 | 114,048 | 119,796 | 124,956 | 129,478 | 134,730 |
| 柔道整復師 | 63,873 | 68,120 | 73,017 | 75,786 | 77,632 | 78,666 |
あはき師と柔道整復師の施術所数の変化
あん摩マッサージ、はり、きゅうを行う施術所数は減少し続けていることが見て取れます。
はり・きゅうを行う施術所は2024年では35,494カ所で、前回と比べると1,604件増加しています。
柔道整復師の施術所(接骨院)は今回の公表では50,924カ所でした。2018年までは2年ごとに2,000~4,000カ所ほど施術所が増加していました。
しかし、2018年以降は増加率が下がり、2018年での増加数は3桁台、そして2024年ではわずか8件の増加になっています。
| 2014年 | 2016年 | 2018年 | 2020年 | 2022年 | 2024年 | |
| あマ指を行う施術所 | 19,271 | 19,618 | 19,389 | 18,342 | 18,017 | 17,831 |
| はり・きゅうを行う施術所 | 25,445 | 28,299 | 30,450 | 32,103 | 33,890 | 35,494 |
| あマ指・はり・きゅうを行う施術所 | 37,682 | 37,780 | 38,170 | 38,309 | 38,374 | 38,595 |
| 柔道整復の施術所 | 45,572 | 48,024 | 50,077 | 50,364 | 50,916 | 50,924 |
柔道整復師の数と接骨院の数から見た現状と未来
1接骨院当たりの柔道整復師の数は年々増加しています。
このようになった要因は下記のことが考えられます。
- ・コロナウイルスの流行により、廃業や閉業に追い込まれ、勤務柔整師が増加したこと
- ・2018年度から新規開業には実務経験が必要となったこと
- ・独立を目指すのではなく、生活できればスタッフで十分だと考える柔道整復師が増えたこと
接骨院1院当たりの就業柔整師数の年次推移(単位:人 / 調査日:各年末)

接骨院1院当たりと柔整師1人当たりの療養費収入の推移を見ていきましょう。
こちらの表は療養費の総額を接骨院数や柔道整復師の数で割って算出したものです。
| 2014年 | 2016年 | 2018年 | 2020年 | 2022年 | 2024年 | |
| 柔道整復療養費推移 | 839 | 757 | 655 | 562 | 557 | 587 |
| 接骨院1人当たりの療養費収入額 | 599 | 534 | 449 | 374 | 365 | 380 |
柔道整復療養費年次推移(単位:億円)

柔整療養費は2014(平成26)年から現在まで、一貫して減少傾向にあることが分かります。
接骨院1院当たりの療養費収入は、2010年では1,000万円を超えていましたが減少を続け、佐藤氏の予測では、2024年は587万円となるそうです。また、柔整師1人当たりの療養費収入は380万円で、この10年間で約4割も減少しています。
療養費収入の減少は柔整師が多い接骨院にとっては有利となります。
柔整師1人当たりの療養費収入が380万円とすると、接骨院に10人の柔整師がいると療養費分だけで年間3,800万円、20人では7,600万円の収入となります。
経費を考慮しても、経営には困らないことでしょう。
一方、圧倒的に数の多い個人の接骨院ではどうでしょうか。
個人の接骨院の場合、療養費収入の380万円から家賃などの経費を支払うと柔整師の取り分を確保するのは難しくなります。
収入を増やすことを考える場合、患者を増やす、もしくは経費の削減をする必要があります。経費の削減を行うことは有効ではありますが、限度があります。
そのため、患者の数をいかに増やせるかが重要となります。
患者を増やすためには、自身の治療院を見直し、大手接骨院ではできない治療内容や治療技術、かかりつけ接骨院になるための模索、自費治療の拡大など、工夫や改革を行い続けることが必要になります。
治療院数が減少していく中で、淘汰されず生き残れると、今よりもずっと安定した業界になると考えられます。そのため、今後の治療院業界では、生き残るための戦略を追求することが何よりも重要になっていきます。


