ミネルバ会計週報『教育訓練費増加割合』2019.07.29
所得拡大促進税制の改組
昨年の税制改正で、所得拡大促進税制は、「賃上げ・投資促進税制」に改組されていますが、適用は今年の3月決算法人からでした。国内雇用者に支払った給与等の総額の前年度比増加額の15%(通常)又は25%(上乗せ)を法人税から税額控除できる制度です。但し、税額控除額は法人税額の20%が上限です。
賃上げ・投資促進税制
国内雇用者とは、役員は除かれますが、パート、アルバイト、日雇労働者も含み国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に記載された者を指します。なお、税額控除額は、「国内雇用者」への給与等支給額の前事業年度比の増加額をもとに算定しますが、税制適用の要件としては、「継続雇用者」への給与等支給額が前事業年度比で1.5%以上又は2.5%以上増加していること、とされています。
別表六(二十四)
ところで、別表の「中小企業者等が給与等の引上げを行った場合の法人税額の特別控除に関する明細書」では、当期の教育訓練費①と前期の教育訓練費②を書き、差額③を算出し、③÷②の算式でその増加割合④を計算するようになっています。その場合、②がゼロだったら、増加割合④は無限大となり答えが出ないので、ゼロと書くように指示されています。
教育訓練費の増加割合10%以上が、25%(上乗せ)適用の要件なので、教育訓練費増加割合の欄がゼロでは、上乗せ適用不可となってしまいそうです。あるいは、前期に教育訓練費の支出があり、その上で当期の教育訓練費支出があって、初めて適用できるのだろうか、と心配になってしまいます。
ところが、同別表をさらに書き続けていくと、「④が10%以上若しくは①=③>0のとき」と書かれている欄に遭遇します。前期欄の②がゼロのために割合欄④がゼロ記入となったとしても、その場合は①-②=①=③>0となり、①>②×1.1という教育訓練費増加要件は満たすので適用可との判定をしています。前期の教育訓練費はゼロでも構わない、ということです。
教育訓練費とは、国内雇用者の職務に必要な技術・知識の習得又は向上のために支出する費用であり、受験手数料も、教育訓練等の一環として各種資格・検定試験が行われる場合に対象となります。