上田会計週報『目標管理と原点回帰』2015.02.18
原点回帰”とは、ものごとに迷いが生じ、どうしたら良いか混乱した時などに基本に立ち返り、初心に戻って考え、対処することを言います。しかし、目標管理のプロセスではしばしば“原点回帰”と異なる対処法がとられています。すなわち、外部環境が悪化して、どうしたら良いか迷った時に最終的な目標達成度評価が不利にならないよう、目標水準の下方修正を考えるのが主な対策となっており、被評価者の納得性に配慮して「半期に1回程度は目標の修正を認めること」が多くの企業の通例となっています。これは明らかに“原点回帰”とは異なる対処法です。
“原点回帰”の方法とメリット
しかし、そこで一度立ち止まって、“原点回帰”をし、外部環境の悪化をできるだけはね返すことができないか、と考えると、意外な発見をする可能性があります。その代表的方法・視点は次の二つです。
[方法1] 目標設定時の原点に立ち返って、戦略の理解・受け止め方、目標ブレークダウン、役割認識、目標達成プロセスの計画等をチェックし、目標そのものを見直し、強化する。
[方法2]“企業理念”に立ち返って、目標達成の取り組み方、進め方に基本的なズレや誤りがなかったかチェックし、見直す。
それは、外部環境の悪化を受けて、直接的に目標水準を下方修正する考え方とは一線を画する、目標達成のために考え抜き、挑戦し続けようとする前向きな姿勢の現われと言え、外部環境など目標達成阻害要因の負の影響を減殺し、場合によっては跳ね返す力を持ちます。
経営者・管理者の留意点
経営者・管理者は目標管理のプロセスでP-D-C-Aがうまく回るよう見守り、異常が起きたときには、「社員に手取り、足取り対策を教えるのではなく、本人が自ら納得できる対策を真剣に探すアドバイスを行なうこと」により、適切な支援を行なう責任があります。そのような時のマネジメント上の支援策として、上記の[方法1・2]について、異常の事実認識を的確に行ない、対応策を創意工夫する視点、自社における過去のチェック・対応策の実例などを準備しておくべきです。企業の存続、発展を支えてきた企業理念は様々な試練に対処して磨かれてきたものであり、また試練と向き合い続けることで確立されて行くものであることを再確認しましょう。