第26回 老後の備え
治療院を営んでいる山田さんは、年金生活している患者さんから年金の話を聞いて、
年金も患者さんによって随分差があることがわかりました。
山田さんはサラリーマンではないので定年はありません。
60歳前後で定年になるサラリーマンと違い、その後も仕事ができると漠然と考えています。
でも、最近職業病なのか、腰や肩が時々痛くなります。どこかで現役引退の時期が必ず来ます。
山田さんは個人事業主なので公的年金は国民年金のみです。
現在の年金受給者に比べて自分が受給するころは、受給時期がもっと後になったり受給額が
減額されているかもしれません。
山田さんは今のうちから公的年金以外の老後の備えをしておくことが必要だと考えるようになってきました。
では、今から始めるにはどんなことが出来るのでしょうか。
貯金、個人年金、貯蓄型生命保険、株式投資、不動産投資等々。
国は、小規模事業主の老後向けに公的な助成制度を設けています。
小規模事業主はこれを利用しない手はありません。
小規模企業共済
先ず最近制度改正が話題となっている小規模企業共済のご紹介をしましょう。
この制度は、小規模事業主が事業をやめたり退職した際に、生活の安定や事業の再建を図るための資金をあらかじめ準備しておく共済制度です。
いわば小規模事業主向け退職金制度です。
制度の運用経費は全て国が負担し、掛金とその運用収入は、全て加入者に還元される仕組みになっています。
では、この制度に加入できる条件はどういったものでしょうか。
常時使用する従業員が二十人以下(商業・サービス業では五人以下)の個人事業主および会社の役員が加入できます。
また、加入時の年齢制限はありません。
山田さんは、サービス業になり、従業員は三人なので加入できます。
では、パート含め六人だったら加入できないのでしょうか。
規定上“常時使用する”従業員が五人以下なら大丈夫です。
では、その後従業員が増えて五人を超えてしまったら退会させられてしまうのでしょうか。
この条件はあくまで加入時なので、その後従業員が五人を超えても大丈夫です。
最近の法律改正により、平成二十三年一月一日より加入対象者が拡大されます。
個人事業主の「共同経営者」で一定の条件を満たす方が加入できるようになります。
「共同経営者」とは、個人事業の経営に携わる方で、一定の条件を満たせば、個人事業主の配偶者や後継者、親族以外の方も加入することができます。
ただし、加入できる共同経営者は一事業主につき二名までです。
共同経営者の主な要件は、事業の経営において重要な意思決定をしていること、または事業に必要な資金を負担していること。
事業の執行に対する報酬を受けていること。
会社組織ですと、役員クラスの人になるかと思います。
次に、毎月の掛金はどのくらいなのでしょうか。
掛金月額は、千円から七万円の範囲内(五百円単位)で自由に選べます。
加入後も掛金月額は増減できます。
減額する場合は、事業経営の著しい悪化、病気・怪我等の理由が必要です。
月払い以外に半年払い、年払いも可能です。
払った掛金は、全額が所得税の課税対象所得から控除できます。
この制度の税制上のメリットはこの所得控除にあります。
具体的には、課税所得六百万円(税率三十%)の場合、掛金月七万円だと、年間八十四万円の所得控除が受けられ、所得税住民税が二十五万二千円節税(掛金の三十%)になります。
所得税率は累進なので、最大掛金の五十%の節税が可能です。
(以下省略)