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やり過ぎ相続対策と賢い相続対策

治療院を営む山田さんは、最近父親から相続対策に自宅を建て替えて一部賃貸住宅にすると相続税が安くなると建築業者から言われた。建築費4千万円は自宅土地を担保にローンを組む。惹いてはローンの保証人になってくれといわれて困惑しています。父親によれば、自宅はいずれお前のものになるし、毎月のローンの返済は賃貸アパートの家賃で返済できる。家賃収入は建築業者が10年保証するとのこと。今年から相続税法が改正され、基礎控除額の減額により、課税対象者が増加しました。一部マスコミでは、関連業者がスポンサーとなり、相続税節税特集等の記事や関連出版、セミナー等で煽っています。今回は、やり過ぎ相続対策の事例、賢い相続対策についてお話します。

 

 

借金で賃貸不動産買って節税

かつて昭和の終わり、バブル華やかだった頃、国内の地価が急上昇。相続税も急上昇。金融機関は相続税対策として賃貸不動産を購入することを中小企業オーナーや医者、資産家に提案。資金は全額融資しますと。相続税法では、賃貸不動産は購入価額からの評価減があります。確かに建てた当時は、相続税は減額になる見込みでした。しかし、相続対策の一番の問題は、相続が発生するのと、対策を打つ時点にタイムラグがあることです。その後バブル崩壊、地価は下落、家賃相場も下落。家賃の下落によってローンの返済が出来なくなった人が続出。不動産を売却してローン残債返済をしようにも、時価が下落したため、ローン残債の方が多く、売りたくても売れない人や、金融機関により不動産を売却され、返済出来なかったローン残額が債務として残り自己破産した人もいました。結果からすると、バブルの頃、このような借金して賃貸不動産を購入する相続対策をしなかった方がよかったことになります。

山田さんのケースでは、業者の試算によると今のままだと相続税は300万円。これが自宅を一部賃貸住宅に建て替えることでゼロになってしまう。それに対して建築費4千万円は全額銀行ローン。土地建物が担保。返済期間30年だと、毎月の家賃収入でローン返済できる。親の年齢が65歳なので、親が亡くなったら子の山田さんがローンを承継する。そのため山田さんはローンの保証人になる必要がある。建築業者は当初10年間家賃保証する。この事例のリスクは、ローンを山田さんが承継すること。相続した不動産の使途が限定されてしまい相続人が自由に使えない、売却もしにくいことです。建築業者は当初10年間家賃保証するとのことですが、11年目からどうなるかは不明です。状況によっては保証しないこともあります。この場合は空室期間のローン返済負担が発生します。少子化により今後の空室リスクは増々高くなっていきます。保証してくれる場合も保証家賃額は当然下がり、毎月のローン返済額の方が多くなってしまうことがあります。保証期間も短くなります。また保証会社が途中で倒産することもあります。これらのリスクを長期間負わなければならないのは山田さんにとっては精神的に大きな負担です。相続税が安くなるからといって相続人に精神的負担をかける対策は止めた方がいいでしょう。

 

 

賢い相続対策

では山田さんのようなケースではどのような対策が賢い相続対策になるのでしょうか。山田さんの実家の建て替えにあたり一階を治療院にして、二階に親が住み、三階に山田さんが住むと相続税はどうなるのでしょうか。建物名義を全て父親にした場合、山田さんは一階と三階を親から借りることになり、毎月家賃を父親に支払います。ここで注意するのは三階については家賃は支払わないで無償で住むことです(相当の対価に至らない程度の対価の授受がある場合を含みます)。これにより父親と同じ一棟の建物に居住していることになり、相続で不動産を相続すると、宅地のうち二階三階部分について小規模宅地の特例の適用があり8割の評価減(330㎡まで)を受けることができます。

父親は家賃収入をローン返済に充てます。所得税法上は、毎年の家賃収入から事業に係る固定資産税、ローン支払利子、減価償却費等の必要経費を差し引いた所得に対して所得税・住民税が発生します。山田さんは一階部分の支払家賃について必要経費にできます。相続が発生し、不動産とローン残債を山田さんが引き継いだ場合、一階部分は事業用に使用するので、事業に係る固定資産税、ローン支払利子、減価償却費等の必要経費の計上ができます。当初のやり方で空室リスクを負うより、自分の治療院の収入をあてにする方が確実で安心です。

 

 

贈与税の配偶者控除を利用する

実家が地方にあり戻れない場合や、治療院をやるには適さない場所の場合の相続対策としては、生前に山田さんの父親から母親に自宅の一部を贈与する方法があります。一定の要件を満たせば配偶者に対して居住用の財産を贈与した場合に、2千万円まで贈与税がかからない制度です。相続開始前3年以内に贈与された財産はみなし相続財産になり課税対象になりますが、この配偶者控除分は除かれます。要件としては、婚姻期間が20年以上。配偶者から贈与された財産が居住用の財産または居住用の財産を購入するための金銭であること。その配偶者からの贈与について配偶者控除を受けたことがないこと。贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住し、その後も引き続き居住する見込みがあること。贈与を受けた年の翌年3月15日までに贈与税の申告をすることです。これを利用すれば、ローンを組んで自宅を一部賃貸住宅に建て替えなくても父親の相続財産が2千万円相当減額になり、相続税も大幅に減額になります。

 

 

生命保険を利用する

山田さんの父親が相続税相当額の生命保険に加入する方法があります。今回は相続税が300万円の見込なので、父親が保険契約者、被保険者になり、保険金300万円の生命保険に加入します。保険種類は、契約した日から死亡するまで一生涯保障が続き、、、以下省略